A…トルマリンの電気特性の発見は1880年に遡ります。フランスのソルボンヌ大学で物理学を専攻していたピエール・キューリーは、兄の鉱物学者ジャックとともに鉱物の結晶構造を調べていました。ある日偶然にトルマリンを手にしたピエールは、トルマリンの結晶に外部から圧力をかけると結晶表面に電荷(電気)が生じることを発見し、これを「ピエゾ電気(圧電気)」と命名しました。さらに、トルマリン結晶を加熱しても電荷が生じることも発見、「パイロ電気(焦電気)=熱を加える生じる電気」と名付けました。キューリー兄弟のこの研究によって、トルマリン鉱石が塵や埃を引き寄せる理由が明らかになったのです。
それ以来トルマリン鉱石は「電気石」と呼ばれるようになり、その後トルマリンの研究はロシアに受け継がれて50種類以上の研究論文が発表され、これまでブラジル・日本など世界4カ国で研究が続けられてきました。
にもかかわらず、キューリー兄弟の発見から100年以上もの間、工業用として実用化されなかったのは、その複雑な結晶構造と電荷の不安定さなど、いわゆる学者泣かせの面が数多くあったからなのです。たとえば、光線や湿度の変化には敏感に反応してしまうし、圧電力は単なる圧力だけでなく摩擦や衝撃などを含む広義の圧力にも電荷を生じてしまうため研究が難しく、工業化に必要なデータを十分に揃えることができなかったためです。
最近では測定器の発達で、トルマリン研究は急速な進展をみせ、トルマリン普及の第一人者である永井竜造先生の著作や講演によって、各企業の商品開発と普及に拍車をかけることとなりました。